著者
長谷部 靖子 尾上 秀彦 松木 直子 渡邉 早苗 八木 完
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.603-611, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
15

目的:近年,我が国における急速な高齢化や生活様式の欧米化により,脳心血管病(cerebral cardiovascular disease: CVD)が増加しており,CVDへの取り組みは喫緊の課題になっている.今回,腹部超音波検査で得られた腹部血管の所見について調査し,今後の健診における課題を検討した.方法:2015年度から2017年度に健診腹部超音波検査を受検した10,594名を対象とし,腹部動脈の所見と背景因子を調査した.結果:腹部超音波検査にて指摘した所見は,腹部大動脈瘤8名(0.08%),総腸骨動脈瘤4名(0.04%),内臓動脈瘤6名(0.06%)(脾動脈2名,腎動脈3名,右胃大網動脈1名)であった.また,腹部大動脈の穿通性アテローム性潰瘍(penetrating atherosclerotic ulcer: PAU)は10名(0.09%)に認めた.粥状硬化は腹部大動脈と腸骨動脈病変で強く,内臓動脈瘤では目立たなかった.結論:健診腹部超音波検査で動脈疾患を指摘することは,CVDによる死亡率の減少と健康寿命の延伸のために意義がある.内臓動脈瘤の指摘には嚢胞と確信の持てない無エコー腫瘤に対して,カラードプラやFast Fourier Transform 解析(FFT解析)を行うことが重要である.腹部大動脈の走査では,腹腔動脈,上腸間膜動脈,腎動脈の起始部や腸骨動脈の狭窄評価,特に粥状硬化が目立つ症例では血管内膜下の低エコーの有無を確認しながら可能な限り腸骨動脈末梢まで走査することがPAUの前駆病変やPAU,動脈瘤の評価には必要である.
著者
尾上 秀彦 長谷部 靖子 渡邉 早苗 八木 完
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.478-485, 2018 (Released:2018-12-31)
参考文献数
17

目的:近年,非アルコール脂肪性肝疾患(Nonalcoholic Fatty Liver Disease:NAFLD)やアルコール性肝障害(Alcoholic Liver Disease:ALD)の増加に伴う肝硬変,肝細胞がんが問題になっている.そこで,腹部超音波検査で脂肪肝の評価を行い,生活習慣病関連項目との関係を検討した.対象:2015年度に健康診断にて腹部超音波検査を受検した5,436名を対象にした.脂肪肝の有無を評価し,脂肪肝をNAFLDの飲酒量である少量,中等量,ALDの飲酒量である多量の3群に分類した.結果:脂肪肝は男性の約46%,女性の約22%に認められた.BMIや腹囲,血圧,糖代謝,肝機能検査は,脂肪肝がない群と比較して3群とも有意に高値であった.また飲酒量による比較では,飲酒量が増えるにつれ,TGやHDL-C,肝酵素の上昇を認めた.生活習慣に関する検討では,性別や飲酒量に関わらず,脂肪肝では「20歳から10kg以上体重増加」が独立して影響し,男性ではNAFLDは「1回30分以上の運動を週2回以上,1年以上」のないこと,中等量やALDは「就寝前2時間以内の夕食が週に3回以上」が独立して影響していた.結論:若年時から生活習慣に対しての介入,飲酒量も加味した保健指導が重要である.