著者
八木下 晃司
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.42, pp.21-28, 1995-09-11 (Released:2010-05-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1

三陸北部沿岸, 久慈市南方の海岸で, 海に面した崖から流れ出る水が前浜を浸食し小水流をつくっている。この小水流において, 波面と下位の堆積物の形状が調和的 (in-phase) な反砂堆が常時形成されている状況を観察した。反砂堆は頂部が直線的でなく, マウンド状であったり, また頂部が二つに分かれてその間に鞍部状の凹地が認められたりするいわゆる三次元的 (3-D) なものが多い。また観察した限りでは, これら反砂堆はその位置を移動しないものが多かった。さて, これら三次元的な反砂堆では, かって Kennedy (1963) が二次元的な反砂堆について理論的に導いた流速と波長の関係式は適用されないことを確認した。このことは仮に地層中に反砂堆の堆積構造を認めたとしても, 堆積構造が二次元的なものでない限り古流速などは求められない, ということを意味する。取り扱った反砂堆が, 水量が少ないにもかかわらず容易に形成されていたのは, 早い水流と淘汰の良い浜砂が好条件となっていたからであろう。