著者
二見 俊郎 前之園 多幸 塚本 行男
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.1229-1232, 1992-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8

著者らは, 過去7年間に大腿外側皮神経障害 (meralgia paresthetica) の13例 (男性3例, 女性10例) を経験した. いずれの症例も Tinel 徴候や電気生理学的所見などから, 鼠径靱帯部での絞的性神経障害と考えられた. 我々の症例で特徴的なことは, 発症原因として下着の締め過ぎによると思われた症例を6例にみたことであった. 治療として, まず全例に保存的療法が試みられ, 6例に症状の改善が得られた. 改善が得られた症例は, 症例12を除きいずれも発症後8ヵ月以内に来院した症例であった. 保存的療法に抵抗した7例中4例に対して神経剥離術が施行され, いずれの症例も鼠径靱帯周囲部での種々の原因による神経の圧迫所見を確認し, 術後症状の改善を得た. 以上のことから, 下着の締めすぎを発症誘因の一つとして認識すべきであり, また罹病期間が短い症例には保存療法が有効であるが長期間の覆病期間を有する症例に対しては, 手術的療法を考慮すべきと思われた.