著者
齊藤 邦行 西村 公仁子 北原 利修
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.27-32, 2012
被引用文献数
14

ダイズ品種エンレイを供試し,倒伏が子実収量に及ぼす影響を評価するため3つの試験を行った.試験Iでは,6月中旬播種,畦幅50&ndash;80 cm,栽植密度10.0&ndash;12.5本m<sup>-2</sup>で10年間栽培を行い,子実収量,倒伏程度と気象要因との関係を調査した.いずれの気象要因ともに試験区収量との間に有意な関係はみられなかったが,岡山県平均単収と台風接近回数の間(P\<0.01),カメムシ被害の2001年を除外した倒伏程度(試験区)と台風接近回数との間(P\<0.05)に正の相関関係が認められた.岡山県平野部における倒伏の主たる要因は台風の接近による強風と降雨であり,倒伏は刈り取り損失も含めた現地収量を大きく減収させると考えられた.試験IIで倒伏防止処理が収量に及ぼす影響を検討した結果,倒伏防止区では対照区に比べて増収が認められ,中程度の倒伏に伴う減収割合は,5~7%程度であると推定された.試験IIIでは,人為的に時期別倒伏処理を行ったところ,減収率は開花期処理で9%,着莢期処理で34%,粒肥大期処理で26%となり,生殖成長初期の倒伏は分枝による補償が大きく,着莢期から粒肥大始の倒伏は減収が著しいこと,また粒肥大盛期以降の倒伏が収量に及ぼす影響は小さくなることがわかった.粒肥大初期に完全倒伏して群落の回復がみられない場合は30%以上の減収が見込まれるが,中程度の倒伏で回復が認められる場合の減収率は5&ndash;15%程度と推定された.