- 著者
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北浦 圭介
浅野 健一郎
- 出版者
- 社団法人 日本腎臓学会
- 雑誌
- 日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.8, pp.887-892, 2005-11-25 (Released:2010-05-18)
- 参考文献数
- 14
抗糸球体基底膜 (GBM) 病は急速進行性糸球体腎炎の経過を辿り, 治療開始時から透析療法を必要とする場合は予後不良とされている.症例は29歳, 男性。 平成15年6月末から38度以上の発熱, 倦怠感を認め近医を受診した。 尿中白血球3+, 尿蛋白2+, 尿潜血3+を示し, 急性腎盂腎炎を疑い当院泌尿器科に紹介入院となった。 入院時CRP 18.9mg/dl, BUN 20mg/dl, Cr 2.9mg/dlを示し抗生剤の投与を行うも, 第11病日にはBUN 78mg/dl, Cr 9.2mg/dlと悪化したため当科転科となった。 細菌培養は陰性であり, 急速進行性糸球体腎炎を疑いソルメドロールパルスを含むステロイド療法, シクロフォスファミドを開始し, 同時に血液透析を行った. 胸部CTでは肺病変は認められず, 腎組織では4個中2個に細胞性半月体を認めた。 MPO-ANCA, PR-3-ANCA陰性, 抗GBM抗体169Uを認め, 抗GBM抗体型糸球体腎炎と診断した。 第30病日からアルブミンを置換液とした血漿交換を6回施行した。 血漿交換後, 抗GBM抗体は28Uまで低下し, それまで乏尿であったが1カ月後には尿量1,000~1,200ml/日を認め, また, 腎機能も徐々に改善し10月末にはBUN40mg/dl, Cr 4.1mg/dlまで低下したため血液透析を離脱した。 その後腎機能障害は悪化せず■に退院した。 後日再度腎生検を施行したが, 20個中18個が糸球体硬化に至っていた。 本例は臨床的に高度腎機能障害を有し, かつ発症から血漿交換開始まで約40日と期間が長かったにも関わらず透析を離脱し得た。 本例では透析を離脱できた原因として血漿交換療法の追加・併用療法が有用であったと考えた。