著者
北澤 保之 志賀 典之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0564-C0564, 2008

【はじめに】森川嗣夫らの報告では、サッカーの傷害は特殊なポジションであるゴールキーパーやヘディングでの競り合いの際生じる頭頚部および顔面の傷害を除くと下肢に大半の外傷が発生している。日本サッカー協会の統計からも足関節靭帯損傷、ハムストリングスの肉離れ、膝内障が多く、サッカーチームのメディカルサポートにあたっては外傷発生に関与した下肢の動きの観察と対応が必須となる。今回成人男子及びJr.サッカーチーム選手のメディカルチェックにあたり、外観上の形態観察で回内・外足を分類する木田貴英らの推奨するDr.Anthony Redmondの視覚的足部アライメント測定方法Foot Posture Index(以下FPI法)とダイナミックアライメントの指標とされるKnee in toe out(以下KITO)およびKnee out toe in(以下KOTI)と負傷との関連性について検討した。 <BR><BR>【対象と方法】成人レギュラー選手 15名 30脚 (男性のみ、平均年齢24才)両内果間1グリップ幅の自然立位とし写真撮影を行った。FPI法に基づき8項目を右・左評定し、各素点の合計で+16から-16の範囲で回内・外足の総合判定を行った。また、膝内・外反、下腿内・外旋の程度を膝蓋骨中央よりの垂線の偏移程度で+10から-10の範囲に分類し、静的(static)アライメント(以下sKITO、sKOTI)の素点とし、クロス集計により3×3の9群にカテゴリー分類を行い、シーズン中の足・膝部捻挫、骨折等の怪我の有無と比較検討した。<BR><BR>【結果】負傷選手は3名、受傷率20%であり、FPI法では15脚が回外足でその内、当該負傷脚を含む11脚が「回外足かつsKOTI」のカテゴリーに属した。Yates補正カイ二乗検定で、危険度5%未満で有意差があると判定された。よって今回の評価法及びカテゴリー分類において「回外足かつsKOTI」群は足・膝部捻挫、骨折等の怪我にハイリスクであると言える。<BR><BR>【考察】従来の踵骨角評価では、Rexxamによると日本人の70%は回内足と報告されている。そのためunhappy triad(不幸の3症候)に代表する扁平回内によるKITO過負荷での外傷の注目度が高いが、今回の対象および評価法では足底筋他の筋肉が良く発達し、足部アーチ機能がしっかりしており、総合判定で回外足が多かった。そして「回外足かつsKOTI」の形態的な個体要因は外傷を誘発しやすい原因基盤のひとつとして考えられた。<BR><BR>【まとめ】足部における生体力学作用は非常に複雑で難解である。FPI法は形態観察から足部を総合的に評価でき安全かつ簡便な為、サッカー選手のトレーナー活動として下肢の動きを観察する上での一助として有用性を感じた。また、当該カテゴリー選手の運動量調整に際しては疲労度を含めたより繊細なマネージメントの必要性が確認された。