著者
千々和 宏作 西村 亮平 中島 亘 大野 耕一 佐々木 伸雄
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia & Surgery
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 = Japanese journal of veterinary anesthesia & surgery (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.21-27, 2008-07-30
被引用文献数
4 1

卵巣子宮摘出術後の縫合糸反応性肉芽腫が疑われた犬22症例について、その疫学、治療、および長期予後を臨床的に解析した。22症例中15例(68%)がミニチュア・ダックスフントであった。診断時の年齢は、中央値3.5(1.1~9.3)歳齢、卵巣子宮全摘出術から診断されるまでの期間は、中央値2(0.3~4.3)年であった。最も多く認められた(13/22)症状は、嘔吐または下痢を伴うあるいは伴わない、元気消失、食欲不振、体重減少、発熱といった非特異的なものであった。検査した17頭中14頭(82%)で、血漿C反応性蛋白(CRP)の上昇を認めた。腹腔内の肉芽腫をすべて摘出した20例では、20症例中16例で、肉眼的または病理組織学的に縫合糸が確認された。周術期に腎不全で斃死した1例を除く19症例中8例(42%)が、経過良好であった。一方、11例は、肉芽腫性胃腸炎、脂肪織炎、無菌性肉芽腫などの新たな疾患の発症や、腹腔内肉芽腫の再発が認められ、11例中10例がミニチュア・ダックスフントであった。以上のことから、避妊手術後の腹腔内肉芽腫はミニチュア・ダックスフントに好発し、腹腔内の肉芽腫を外科的に切除しても、病理組織学的に肉芽腫性炎症を特徴とする新たな疾患を発症する可能性があるものと推察された。<br>