著者
古谷 将彦 西村 岳志 森田(寺尾) 美代
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.624-630, 2017-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
40

植物は生活環のほとんどで移動することはないが,「運動」する.さまざまな植物の運動の中でも「屈性」という成長運動は,進化論で有名なDarwinなど多くの研究者の興味をひ引いてきた,植物生理学の課題である.屈性の特徴は,植物が光,重力,水分,接触などの刺激の方向を認識したうえで成長方向を変化させる,という点にある.屈性は,刺激受容,細胞内シグナル伝達,細胞間シグナル伝達,器官屈曲の順に反応が進むと考えられる.後に紹介するが,細胞間シグナル伝達や器官屈曲とオーキシンとの関連性は,近年分子・細胞レベルの研究が進んでいる.本稿では重力屈性を中心に,最新の知見を概説する.また最後に,植物の側方器官が重力を指標に一定の角度を保って成長をする傾斜重力屈性と呼ばれる現象についての解説も加える.