著者
古谷野 さとみ 籏持 淳 山崎 雙次 石川 准子 北原 隆 成田 博文 近藤 直樹 増川 克典
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.494-499, 2010-09-15 (Released:2010-11-19)
参考文献数
11
被引用文献数
11 13

角層のセラミド(Cer)は,皮膚のバリア機能や保湿機能に重要な役割を果たしており,乾癬やアトピー性皮膚炎においては,角層の機能低下にともなうCerの減少が知られている。そこで,乾癬における角層Cerの詳細解析を行い,アトピー性皮膚炎との比較を行った。その結果,乾癬皮疹部においては,健常と比較して総Cer量が顕著に減少しており,このうちCer[NDS],Cer[NH],Cer[NP],Cer[AH],Cer[AP],Cer[EOS],Cer[EOH],Cer[EOP]の顕著な減少と,Cer[NS]とCer[AS]の顕著な増加が認められた。ヒト角層に存在する11クラスのCerのうち7クラスにおいては,Cerの短鎖化(短鎖成分の増加と長鎖成分の減少)が認められた。このような角層におけるCer異常は,アトピー性皮膚炎角層で認められたものと一致した。また,乾癬皮疹部で認められたCer異常の一部は,無疹部においても認められ,表皮におけるCer代謝異常が病態形成に及ぼす影響や,角化異常との関連が推察された。