著者
池田 光政 右内 忠昭 富澤 長次郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.238-243, 1986-10-26
被引用文献数
1

^<14>C標識したorbencarbを用い、ダイズ、コムギ、トウモロコシ及ぴメヒシバ幼苗における代謝を検討した。2.5ppm水掛液に4種楠物の根部を浸し96時間栽培した。^<14>Cは植物に徐々に吸収され、植物全体に移行した(Fig.2)。植物間で新葉に移行する^<14>Cの割合はダイズが最も高かった。植物を含水メタノールで磨砕抽出後、ジクロロメタンー水分配を行うと、ジクロロメタン層に未変化のorbencarb、 orbencarb su1foxide、 desethyl-orbencarb、 N-vinyl-orbencarb、 N-β-hydroxyethyl-orbencarb、 4-OH-orbencarb、 5-OH-orbencarb、 2-chlorobenzyl alcohol、 2-chloroben-zoic acid、 methyl 2-chlorobenzylsulfide、 methyl 2-chlorobenzylsufoxide、 methyl 2-chlorobenzylsulfone S-(2-chlorobenzyl)-N-malony-L-cysteine、 S-(2-chlorobenzyl)-N-malonyl-L-cysteine sulfoxideが、水層にS-(2-chlorobenzyl)-L-cysteineと2-chlorobenzylsulfonic acidが合成標品とのCo-TLCにより同定された(Table 1)。また水層を酵素処理すると、2-chlorobenzyl alcoholと2-chlorobenzoic acidが遊離され、これら化合物の糖抱合体の存在が認められた。orbencarbの2-chlorobenzyl部は、すべての植物でS-(2-chlorobenzyl)-L-cysteine、 S-(2-chlorobenzyl)-N-malonyl-L-cysteine及びそのsulfoxide (Fig.1)に代謝され、これら含cysteine代謝物の捕物中全放射能に対する割合はダイズ、コムギ、トウモロコシ及びメヒシバでそれぞれ19.3、 12.5、 10.1及び3.3%であった(Fig.3)。2-chlorobenzyl alcoholや2-chlorobenzoic acid等の他の主要な代謝物の割合は植物間で大きな差がなかった。4種の植物で同じ代謝物が検出されたことから、orbencarbの代謝経路は植物が異っても類似しており、S-(2-chlorobenzyl)-L-cysteine類縁体の生成が主要な代謝経路の1つとして推察された。