著者
吉岡 豪 今枝 紀明 鳥本 安男 水野 拓
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.4-11, 2001-03-10 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14

夏季のトラック輸送が, 豚ストレス症候群 (Porcine Stress Syndrome: PSS) 遺伝子型の異なる豚に及ぼす影響を検討する目的で, PSS遺伝子型をヘテロ接合体で保有する (以下, Nn型) 個体とPSS遺伝子を保有しない (以下, NN型) 個体を輸送間平均気温36℃ (以下, 36℃区) 及び平均気温30℃ (以下, 30℃区) の条件下で輸送し, 直腸温度, 呼吸数, 輸送前後の血清中グルコース, 乳酸, サイロキシン (以下, T4), コルチゾール濃度の変化を調査した。36℃区の直腸温度変化は, NN, Nn型ともにトラック搬入時に上昇し, Nn型の体温はNN型に比べ有意 (P<0.05) に高かった。一方, 30℃区は36℃区と同様にトラック搬入時で各遺伝子型ともに直腸温度が上昇したが両遺伝子型に差はみられなかった。呼吸数は, トラック搬入時点で比較するとNn型がNN型よりそれぞれの輸送区において高い傾向にあった。血清中グルコース濃度はいずれの区の各遺伝子型において輸送前から後にかけて上昇する傾向であった。乳酸濃度については, 両遺伝子型に輸送による影響は認あられなかった。血清中T4およびコルチゾール濃度は, 各区においてNN型, Nn型ともに, 輸送前から後にかけて有意 (T4: P<0.05コルチゾール: P<0.01) に上昇したが, 遺伝子型間に差は無かった。直腸温度や呼吸数の変化は, 高温環境下において豚をトラックに搬入する際に, 最も大きなストレスを受けることを示していた。本研究の結果から環境温度36℃における輸送では, 輸送に対する豚の反応がPSS遺伝子型に依存して異なることが示唆された。