- 著者
-
吉川 澄夫
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2019年大会
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
平成7年兵庫県南部地震(M7.3)は,本震前に地殻変動,地下水,電磁気などの様々な変化を伴い,地震活動の異常が観測されたことが知られる地震である.特に茂木(1995)は長期的・広域的な視野で地震活動の空白域と静穏化現象を指摘している.吉田(1995)は地震活動の先行現象の広域性を指摘し,震源域よりも広い領域が地震発生プロセスに関わっていることを示した.そこで何らかの予知手法を想定した場合,このような広域の先行現象を根拠にどの程度の確度で評価可能かが問題となる.eMAP は地震発生率をポアソン確率により評価するツールである(吉川・他,2017).個々の震源毎に領域を設定し,全ての領域の異常の度合いを表示することがこの方法の特徴である.上述の問題を考える為,この方法による広域地震活動の診断の可能性を検討した.兵庫県南部地震の際の広域の地震活動静穏化・活発化現象を,近畿・中国・四国地方を中心に解析したところ,以下の特徴が見出された.当時の気象庁震源カタログは一元化処理開始前であり,1988年以降の検知力はM2.0程度と考えられる.本震の5〜6年前までは,地震活動の空間的な分布が比較的短期間に変化し安定したパターンが見られないが,本震の約2年前,兵庫県東部で約50kmの範囲にわたり静穏化現象が確認される.そして本震約1年前から発生時まで,震源域とそれを囲む広い範囲の複数地域で活発化の状況を示した.これは諸々の活断層・構造線沿いに小規模な前震的活動が起きていたことによるものと思われる.この地震活動の時間的推移に基づいて予測手法を想定すれば次のようになる.まず静穏化現象の場所と広がりを把握することにより本震の発生場所と規模を想定し(吉川,2015),次に広域の地震活動の時間変化の同時性を検知することにより,相関解析などの手法をもって時期を推定するというものである.