著者
吉村 淳子
出版者
新見公立短期大学
雑誌
新見公立短期大学紀要 (ISSN:13453599)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.87-91, 2007

本研究では、ひとりの高齢者に今まで生きてきた生活について語ってもらうことにより、その語りの中に在る音風景を抽出することを試みたものである。そして、その音風景が高齢者のケアに有効に活用できるのではないかという可能性を検討した。語りが進むにつれ笑顔が増える、笑い声がでる、生き生きとした表情になるなどの身体的変化が起こった。それに伴い声のトーンが高くなり、非常に饒舌になっていった。これらは、昔語りをすることによる効果であった。その中に在る音を思い出すことで活気ある時代を過ごした身体感覚が蘇り、当時の運動記憶や知覚記憶が再生され、自己意識が活性化されたものと解釈することができる。