著者
吉田 令子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学健康科学研究 = Mejiro Journal of Health Care Sciences (ISSN:18827047)
巻号頁・発行日
no.15, pp.33-40, 2022-03-31

《目的》本研究の目的は、文献を通して訪問看護ステーションにおける災害の備えについて概観し、現状を記述することである。《方法》医学中央雑誌web版で文献検索を行い、「災害看護」のすべての文献6683件について、1991年より5年ごとの件数の推移を概観した。「災害看護and訪問看護and原著」の検索式から29件のうち、目的に沿って22件を選定し、その概要を表にまとめた。在宅看護の研究者が文献を精読し、訪問看護ステーションにおける災害の備えについての記述を質的に分類した。《結果》22の文献より、訪問看護ステーション事業所における災害の備えについて【防災対応マニュアルの整備】、【災害に特化した地域の情報】、【停電や緊急時を見越した個別情報の管理】、【緊急時の関連機関との連携】、【緊急時の備品や備蓄】、【職員の災害の対処能力を高める】の6つのカテゴリが得られた。また、利用者や家族への減災のための教育として、【住環境の安全対策】【災害直後の数日分の備蓄】【停電、断水などの対策】【通信や情報収集方法の確保】【避難場所や方法の検討】がなされていることが示された。《結論》訪問看護ステーションでは、平時から事業所内の防災対応マニュアルの整備と要援護者・家族の情報を管理し、災害の種類に応じた避難場所、連携のための連絡先、避難に必要な器具や物品等の備えやスタッフの教育を行っていた。また、利用者と家族には、生活に即した環境整備の勧めと療養者や家族への減災の教育を行い、自助を促すかかわりは少ないことが示唆された。訪問看護ステーションの単独のかかわりには限界があり、地域の多職種、他機関との連携による防災訓練の実施など、シミュレーションを通して要援護者と家族の自助の力を高めることが課題である。