著者
菊地 隆文 名取 廣 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-150, no.15, pp.1-8, 2020-07-23

現代の情報サービスは,分散システムが基盤となっている.分散システムにおいて,大規模な障害が発生すると,サービスの停止につながる.したがって,分散システムの信頼性を向上させることは重要な課題である.分散システムにおける障害の発生要因の 1 つに,パケット処理のテイル・レイテンシがある.例えば,ハートビートの遅延は,リソースモニタリングの遅延や障害の誤検知を引き起こす.このようなパケットの遅延は,ソフトウェアが要因となり発生することが報告されている.高速なパケット処理を可能とする技術として,DPDK や XDP が挙げられるが,他の割込みによる遅延や既存のシステムへの統合などの課題が残る.本論文では,オペレーティングシステム内において,パケット処理のテイル・レイテンシを削減するシステムを提案する.ハードウェア割込みハンドラ内に,安全にユーザーコードをロードし,パケット処理を可能とすることで,テイル・レイテンシを引き起こす要因を回避する.本システムの有効性を示すため,I/O 負荷がある状態において,パケットのエコープログラムを用いてラウンドトリップタイムを測定した.その結果,DPDK や XDP といった既存の技術と比較して,パケット処理のテイル・レイテンシを削減できることを確認した.