著者
名田 陽一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.434-440, 1985-02-25
被引用文献数
1

熊本県西合志町において越冬可能な暖地型牧草10草種に放牧し,そのし好性,採食量,草地密度を調査した。さらに別の圃場で同じ草種について刈取試験を行ない季節生産性を調査した。入牧時の牧草量にたいする採食量の割合(採食率)および評点法によるし好性はソルガム「シルク」,カーペットグラスが極めて高く,セントオーガスチングラス,ベイジイグラス,スイッチグラス,リトルブルーステム,キシュウスズメノヒエと続き,バーミューダグラス「コモン」,同「ティフトン44」,ウイーピングラブグラスは極めて低かった。比較のために同一放牧草地内のダリスグラスとバヒアグラスを評点で測定した結果,ダリスグラスのし好性は極めて高く,バヒアグラスは中間よりやや低かった。また牧草乾物率とし好性との間に負の相関があり,出穂茎および生長を停止した牧草の乾物率が高く,これらのし好性が低かったと推測した。放牧条件下における草地の密度はウイーピングラブグラスがやや株数の減少をきたした以外はほふく型,たち型牧草ともに良好であった。刈取試験による季節生産性は,季節を通して平準な草種(バーミューダグラス「コモン」,同「ティフトン44」),季節の進むにつれて増加する草種(キシュウスズメノヒエ,カーペットグラス,ベイジイグラス),季節の進むにつれて減少する草種(セントオーガスチングラス,ウイーピングラブグラス,スイッチグラス,リトルブルーステム)等多様であった。一方採食量の季節変動はし好性の要因が加わるために刈取収量よりみた季節変動とは異なった。上記の要因を総合して,カーペットグラス,ソルガム「シルク」,ベイジイグラスが九州での放牧利用に有望であると考えられた。