著者
中島 由親 和久 宗明 今井 均
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.833-838, 1993-11-15

症例は62歳男性.1988年4月肺結核発症.多剤耐性結核にて排菌止まらず,1990年8月21日に右肺上葉切除施行.その後気管支瘻となり同年10月9日に気管支瘻閉鎖,胸郭成形を行うも気管支瘻再発し右MRSA膿胸を併発,同年12月20日右腋窩前方に膿胸腔を開放した.連日の包交にて創面の浄化をはかり,創面MRSA感染は持続したものの,1991年4月2日創面掻爬,気管支瘻閉鎖を行い,同4月16日Scapular Flapにて開放創面の被覆閉鎖を施行した.手術手技は右肩甲部にてcircumflex scapular arteryの横走するcutaneous branchを中心に14× 8cmの皮膚弁を作成し,腋窩背側部の筋間にトンネルを開け有茎にて創面へ誘導,創線にflapを全周性に縫合し肺raw surfaceを含む浅い開放創全体を被覆した.術後MRSAによる小膿瘍が創縁に生じたが,数回の小処置にて現在創下端に僅かな皮膚瘻を残すのみで,開放創の閉鎖にほぼ成功した.