- 著者
-
朝倉 俊成
中野 玲子
浅田 真一
和田 幹子
- 出版者
- 一般社団法人 日本くすりと糖尿病学会
- 雑誌
- くすりと糖尿病 (ISSN:21876967)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.1, pp.104-113, 2020-06-20 (Released:2020-08-24)
- 参考文献数
- 34
糖尿病療養指導では患者の簡便性や実践度にも配慮してインスリン製剤の保管に関する留意点として,「原則として使用前は2〜8℃(凍結を避けて冷蔵庫内)保管,使用開始後は(冷蔵庫には入れずに)室温保管」と説明している.しかし,近年,市街地でのヒートアイランド現象や気候変動などにより世界各地の環境温度の上昇が見られ,高温環境下での適正な保管に関した不安から,患者が保管温度に配慮するも品質を維持するために苦慮していることが伺える.基礎試験からは,高温状態でのインスリンの立体構造の変化とそれによる薬理活性を減弱させる恐れが排除できないため,インスリン製剤の保管は可能な限り4℃付近の冷蔵保存が推奨されるべきである.近年,日本各地において30℃以上(真夏日)の日数が増加しており,これからも増加傾向にある.そこで,高温対策のひとつとして,これまで指摘されてきた使用中の注入器を冷蔵庫内に保管した場合の問題点には十分配慮し,室温が30℃を超える場合は,使用中のプレフィルド(キット)型のインスリン製剤は,(注射針を取り外した上で)冷蔵庫に保管し,注射の前には常温(15〜25℃)程度に戻すことを推奨する.