著者
唐川 正洋
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3-4, pp.188-195, 1993-12-20 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

左主幹部を責任病変とする急性心筋梗塞は非常に重篤であり,早期の診断と適切な処置が必要である.それゆえ,心電図より冠状動脈の狭窄,閉塞の程度を推測することは大切である.緊急冠状動脈造影を行った302例のうち,左主幹部病変を含む左前下行枝近位部で閉塞が認められた89例の初回急性前壁心筋梗塞の心電図について検討した.その結果,3枝病変例,左主幹部病変例では1,2枝病変例に比し心筋梗塞急性期にみられる典型的な前胸部誘導のST上昇を認める頻度は約50%と低く,むしろST低下を認めた例が30%存在した。また広範な心内膜虚血時に見られると報告されているaVR誘導のST上昇は多枝に病変があるほど頻度が高く,特に左主幹部病変例では92%の例に認められた.以上の所見より急性心筋梗塞時に見られたaVR誘導のST上昇は重症冠状動脈疾患,とりわけ左主幹部病変の診断に有用であると考えられた.