著者
坂平 文博 寺野 隆雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_97-3_108, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)

人類学・考古学においては,物的資料が残されていない,ある特定の時点間で起きた変化の「プロセス」について客観的な考察を行うことが難しい.そこで,筆者らはこの変化の「プロセス」を抽出する方法として,エージェントベースシミュレーション(ABS)を適用する.本論文では,弥生時代の農耕文化の「主体」についての問題をABSによって検討する.シミュレーションの結果,初期の段階で多くの縄文系弥生人に農耕が伝播した場合の方が,渡来系弥生人が300年後に大多数を占めることが示された.この結果は,農耕文化の「主体」が,初期において縄文系弥生人でその後は混血の人々であった可能性を示す.本研究の人類学・考古学分野へのABSの貢献は以下のとおりである.既存研究の多くが入力データやモデルからシミュレーション結果が歴史事象を説明できるかどうかという問題を扱っているのに対して,本論文ではABSを新しい仮説に繋がる変化の「プロセス」を調べる新しいツールとして利用している.