著者
福森隆寛 堀井圭祐 中山雅人 西浦敬信 山下洋一
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2013-SLP-96, no.6, pp.1-8, 2013-05-16

実環境下での音収録において,周囲の雑音が目的信号に混入し音質が大きく劣化するという問題がある.そのため,収録した音を受聴する場合,混入雑音を抑圧し目的音のみを強調することが重要である.単一マイクロホンでの音収録における雑音抑圧手法としては,SS (Spectral Subtraction) が一般的に利用されている.SS は低演算コストで雑音を抑圧できるが,ミュージカルノイズと呼ばれる聴感上不快な雑音が発生する.そこで,SS を用いて雑音抑圧後の信号を受聴する場合,ミュージカルノイズを発生させずに混入雑音を抑圧する必要がある.これまで,ミュージカルノイズ低減のために SS を反復する手法が提案されており,その有効性が確認されている.しかし,これらの手法では全周波数で一様に雑音を抑圧しており,周波数毎に雑音抑圧量を制御することで更なるミュージカルノイズの低減が期待される.そこで,本研究ではミュージカルノイズが発生しない雑音抑圧手法の構築を目指して,聴覚特性に基づく反復 SS を提案する.提案法の有効性を確認するために,客観・主観評価実験を実施した.各評価実験の結果,提案法は従来法と比較して高い雑音抑圧性能を達成しつつ,主観的にミュージカルノイズを低減できた.