著者
堀口 真司
出版者
神戸大学経済経営学会
雑誌
国民経済雑誌 = Journal of economics & business administration (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.221, no.6, pp.61-83, 2020-06

本稿では,2019年1 月に出版されたブルーノ・ラトゥールの邦訳書『社会的なものを組み直す』の中に収められた,経営学を専攻する学生とその著者ラトゥールとの間で交わされた出口の見えないやり取りを糸口として,経営学に,彼らが提唱する理論(アクターネットワーク理論)を応用するとはどういうことなのかについて考察することを目的とする。そこでは,まず,同書が書かれた背景を整理することによって,ともすれば掴みどころのない彼の視点を,より具体的な制度へと引き寄せながら明示し,その後,そうした視点から経営学を眺めることを試みる。結果として,「経営的なもの」を所与の前提として猛威を振るう経営学の「専門家」の姿が明らかとなる。