著者
堺 竜介 甲田 亨 馬場 孝輔 奥野 龍禎 中辻 裕司 望月 秀樹
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.47-50, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9

症例は69歳の男性である.右耳介の発赤腫脹の後,活動性の低下,パーキンソニズムを呈し,頭部MRIにて両側対称性に大脳基底核に高信号を認めた.その後,精神症状が亜急性に進行し,髄液中の細胞と蛋白の増加があり,造影効果も認め,自己免疫性脳炎と考えてステロイドパルス療法を実施した.改善を認め転院となったが,その後辺縁系を含め広範囲に病変を呈し当院へ再入院となった.ステロイドパルス療法を実施し症状,頭部MRI画像での改善が再度得られた.後に抗N–methyl–D–aspartate(NMDA)受容体抗体が陽性と判明,経過を通じて悪性腫瘍の合併も明らかではなく非典型的な経過ではあるが,抗NMDA受容体脳炎と考えられた.パーキンソニズムで発症し,病初期の画像は基底核病変のみで,緩徐に進行する脳炎でも抗NMDA受容体脳炎を考慮し,精査する必要があると考えられる.