著者
増本 弘文
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.38, pp.39-49, 2010-03

平成16年から死刑確定者数は急増し、死刑の基準の明確化が必要である。筆者は以前、死刑判決の具体的量刑基準を明らかにしようと試みた。しかし、闇サイト事件はこの基準を超えるのではないかと思われる。また、検察側の立証方法が、裁判員制度を意識し過ぎたために過度に生々しいものになっているのではないかとの批判もある。そして、月ヶ瀬村殺人事件のように、無期懲役を甘受しながらも刑務所の中で自殺してしまう人もいる。主観的要素を判断することは非常に難しい。いずれにしても、死刑判決という非常に厳しい情況下においても、裁判員は中立であるように努めなければならない(検察官も同様である)。
著者
増本 弘文
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p29-50, 1995-03

死刑の一般的量刑基準を示した昭和五八年の永山判決以後の判決を検討した結果、以下のような死刑の具体的な量刑基準を定立することができた。しかし、心中事件に関する死刑判決が存在しないため、その量刑基準は不明のままである。①無期懲役の前科は、罪種・被殺者の数に拘らず死刑②被殺者三名以上の場合は、原則死刑であり、極めて例外的なケースにおいてのみ死刑が回避され得る以上のいずれにも該当しない場合であり、かつ、③被殺者一名では、「重い前科のない被告人が、悪しき動機に基づき、とりわけ残酷な方法で計画的に殺害した」という標準的ケースを少なからず上回る場合(例えばバラバラ殺人のような群を抜いて残酷な殺害方法)にのみ死刑④被殺者二名では、右の標準的ケースと同等あるいはそれを上回る場合に死刑しかし、以上の基準、就中③④は必ずしも安定的とは言えず、今後の判例の動向に注目しなければならない。