著者
渥美 義賢 大久保 義朗 松浦 雅人 小島 卓也
出版者
国立特殊教育総合研究所
巻号頁・発行日
1992

精神疾患を持つ子供は、障害児の中でも特に睡眠覚醒リズムの障害を合併していることが多く、そのことが種々の精神症状に影響を与えたり、生活上の支障となる場合が多く、詳細を研究によって解決すべき問題がある.そこで今回の研究では、54名の精神的疾患のある子供を対象とし、睡眠障害の種類を調査した。精神疾患の内訳は、ダウン症候群8名、自閉症もしくは自閉傾向のある子供20名、精神発達遅滞26名である.何らかの睡眠覚醒障害のある割合は全体で50%とかなり高った.特に自閉症では75%と高く、精神発達遅滞では46%であったが、ダウン症では0%と全くみられなかった.睡眠覚醒障害の種類に分けてみると次のようになる.入眠困難は自閉症で45%、精神発達遅滞では23%にみられ、早朝覚醒は自閉症のみにみられ10%であった.夜泣きを中心とする中途覚醒は自閉症の35%と精神発達遅滞の15%にみられた.睡眠覚醒の時間帯やその時間が不規則になる本態的な睡眠覚醒リズム障害はそのサブタイプの不規則型がすべてで、自閉症の40%、精神発達遅滞の8%にみられた.過眠症型の長時間睡眠者は自閉症では0%であったが、精神発達遅滞では19%にみられた.以上の結果からみると精神障害の種類により睡眠覚醒リズム障害にも特徴的なパターンがあることが分った。ダウン症では睡眠障害は稀であまり問題とならないのに対し、自閉症と精神発達では高率におこること、自閉症では入眠困難や中途覚醒が多いが精神発達遅滞では過眠症がかなりみられることなどが明らかとなった.次の段階ではこれらの睡眠覚醒障害について脳波等の客観的・生理学的特徴を明らかにすることが必要と考えられた.