著者
大坪 牧人
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.12, 2003

「身につける」という日本語に象徴されるように、人は知識や道具などの使い方を「身体化」する。「身体化」することのできる道具は、とりあえず「使用可能」な道具だといえるだろう。これまでユーザーインターフェイス、ユーザビリティーといったデザインの課題領域において、「わかりやすさ」という基準は盛んに語られてきたが、「身につきやすさ」という基準については明示的に語られることがなかった。この指摘の背景には、「使いやすさ」「わかりやすさ」という基準だけでは「身につきやすさ」という条件を、必ずしもカバーしきれないという前提がある。たとえば、自転車のような道具を取り上げてみるだけでも「わかりやすさ」という基準を適用しにくいことがわかる。しかし、われわれは自転車の乗り方を「身につける」ことができるのだ。本研究では、認知科学の動向が、生命理論と交差するような領域-暗黙知理論、オートポイエーシス論、エナクティビズムなど-の知見を探索しながら「道具身体化現象」の解釈を試み、道具デザイン、ユーザーインターフェイス研究の基礎的研究領域構築を目指す 。