著者
大庭 亨
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.275-278, 2014-07-01

大学で化学を研究する立場から,特許に含まれる技術情報の受け止め方について私見を述べた。実際に実験を行う上で,実施例に記された実験方法やデータなどは参考になる。また,従来技術に関する記述は当該分野を俯瞰するのに役立つ。ただし,記述の形式こそ学術論文と似ていても,内容の事実性が審査されないまま公開されていることを考慮しなければならない。特許は技術文献ではあるが,より本質的には発明の技術的範囲を明示する権利書である。最小限の情報開示で最大限の権利を獲得しようとする結果として,明細書の記述に不充分さや曖昧さが含まれている可能性を,特許の技術情報を読む上では常に念頭に置く必要がある。