著者
大森 正夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.85, 2003

京都の東山慈照寺(通称・銀閣寺)には、建造物のみならず庭園内に向月台や銀沙灘など月に由来するものが数多く、その回遊式庭園における誘導性の因子として「観月」が重要であったことが偲ばれる。また、現在の庭園は樹木が茂り、十分な観月環境にはなっていない。そこで、東山殿として創建された室町時代の庭園池と銀閣が観月施設として如何に機能していたのかを検討するために、その当時(1489年)の月の軌道をサイバースペース上に再現し、視点移動に伴うヴィスタを再現した。観月空間のCGシミュレーションによって建物の配置、庭園池の位置づけなどを明らかにすることができた。さらに、園池で催された観月の宴日として想定される十五夜(中秋の名月)と十三夜(後の名月)での軌道の相異は、観月の場所と銀閣の配置にも大きな影響を与えていることが推察できた。