著者
大濱 靖匡
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.2_40-2_52, 2008-10-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

情報通信網の高度化,複雑化,大域・広範化が地球的規模で進む現代の情報化社会において,多端子情報理論の枠組みとその成果の重要性が増している.その一方で,多端子情報理論には,基本的で重要であるにもかかわらず,いまだ解決されていない様々な問題がある.本稿では,多端子情報理論を支える柱の一つである多端子情報源符号化の研究を概観し,これまでに提起された基本的未解決問題の幾つかについて述べる.その中の一つとして,二つの情報源に対する分散符号化の枠組みにおける伝送率・ひずみ領域の決定問題がある.この問題に関しては,最近,情報源がガウス形で二乗誤差ひずみの場合に完全な解決が得られた.この解決には,筆者の得た研究成果が深く関与している.ガウス形情報源に対する上記の未解決問題の完全解決に関しては,そのエッセンスを筆者の研究成果との関係も含めて詳しく紹介する.