著者
大熊 房太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.49, 1970-12-01

インフルエンザはしばしば大流行をおこす伝染病なので,昔からその流行は記録されて後世に残されることが多く,すでにヒポクラテスも彼の著作にインフルエンザと思われる病気を記載しているくらいですが,『三代実録』(平安時代に書かれた官撰の国史書)によりますと,わが国では清和天皇の貞観4年(862年)に「咳逆」という病気が流行して多数の死亡者がでており,これが記録の上での日本最初のインフルエンザの流行であろう,といわれています。 ヨーロッパでの流行の確実な記録は6世紀ごろまでさかのぼることができますが,おもしろいことに西欧ではインフルエンザが流行すると,いつの時代でも,そのインフルエンザにはおどけた調子のニック・ネームがつけられることになっていました。