- 著者
-
大矢 康介
阪本 浩太郎
渋木 英潔
森 辰則
- 出版者
- 一般社団法人 言語処理学会
- 雑誌
- 自然言語処理 (ISSN:13407619)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.1, pp.31-63, 2020-03-15 (Released:2020-06-15)
- 参考文献数
- 23
本稿では,世界史に関する大学入試論述問題に対して自動要約手法に基づき解答を自動生成する際の知識源の一つとして世界史用語集に注目し,見出し語と語釈部に分かれている文書データから解答となる文章を作成するために,語釈文における見出し語に照応するゼロ代名詞とその表層格を推定する手法を提案する.本稿の扱うタスクは,先行詞候補が見出し語に限られている一方でそれに照応するゼロ代名詞を複数の候補から一つ選ぶという点,および先行詞である見出し語が文中に存在しないため,照応解析において有効な手掛かりとなる先行詞の文脈情報が全く使えないという点で,従来のゼロ代名詞照応解析とは異なる.世界史用語集を対象とした評価実験を行った結果,KNP を用いた既存のゼロ照応解析を使用した手法に比べ,提案手法が有効であることが確認された.さらに,出現頻度の低い表層格で埋め込まれる場合の精度低下が観察されたため,通常の文から擬似訓練事例を生成する手法を検討した.同事例を使用した結果,ヲ格,ニ格の推定の F 値を改善できることが確認された.