著者
大谷 稔男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.18-22, 2013-04-10

要約 インスリンを同一部位に繰り返し注射するとアミロイドが沈着して結節を生じることがあり,インスリンボールとも呼ばれる.インスリンがアミロイドを形成する過程では,インスリン分解酵素の機能低下などが関わる可能性がある.インスリンボールは常色~褐色調の結節で,ときにlipohypertrophyとの鑑別を要する.最近われわれは,1型糖尿病患者の上腕に生じたインスリンボールを経験した.臨床像から皮膚悪性腫瘍も疑ったが,病理組織学的所見からアミロイドーシスと診断した.インスリン注射部位(腹部,上腕,臀部,大腿)に結節をみた際は,インスリンボールも念頭に皮膚生検を行い,診断を確定することが肝要である.インスリンボールへの注射は疼痛が少なく好んで行われる傾向があるが,インスリンの効果は顕著に減少する.診断後は内科医とも連携して,注射部位のローテーションを患者に指導する必要がある.