著者
小松 晴菜 鈴木 陽介 吉島 千智 小田 絢子 大野 恵子
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【目的】糖尿病の発症率は加齢と共に著しく増加する。高齢糖尿病患者は、筋肉量の減少、身体機能の低下によるサルコペニアを合併しやすく、サルコペニアは血糖コントロールを悪化させる。血糖降下薬であるNa+/グルコース共役輸送担体2(SGLT2)阻害薬は尿中へのグルコース排泄を通じて血糖コントロールを改善し、体重減少を誘発する薬物であるため、体重減少とともに筋肉量の減少が懸念される。しかし、SGLT2阻害薬が筋肉量に与える影響については未だ明らかではないため、今回、メタ解析の手法を用いて検討を行った。【方法】本研究では、PubMed、Cochrane Library、医中誌Webのデータベースを用いて、SGLT2阻害薬を投与しており、かつ、筋肉量に対する影響を検討している無作為化比較試験を検索した。筋肉量の指標には無脂肪量を用いて、統計学的に評価した。なお、データの統合・解析はRevMan 5.4で行った。【結果・考察】上記のデータベースを検索した結果、80報の論文が抽出され、その中で採択条件を満たした無作為化比較試験は4報であった。そのうち3報は標準治療に上乗せしたプラセボ対照試験で、1報は標準治療との比較試験であった。筋肉量の指標である無脂肪量のベースラインからの変化はプラセボ群と比較してSGLT2阻害薬群で有意に減少した(MD: -0.48; 95%CI: -0.90, -0.06; p = 0.03)(図1)。また、脂肪量のベースラインからの変化もSGLT2阻害薬投与群で有意に減少した(MD: -1.72; 95%CI: -2.23, -1.22; p<0.00001)(図2)。以上の結果から、SGLT2阻害薬は主に脂肪量を減少させるが、筋肉量も減少させ、サルコペニアのリスクを高める可能性が示唆された。しかし、現在SGLT2阻害薬服用後の筋肉量の変化を評価した無作為化比較試験が少ないことや、筋力や身体能力などの筋肉量以外のサルコペニア発症に関与する要因については未だ不明であるため、今後、長期間における更なる臨床試験が行われることに期待が寄せられる。