著者
大野 脇弥 田中 明
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-41, 1966-05-30

1963年6月30日から10月18日の間に5回にわたり,放牧牛と行動を共にして,牛群の動線および牧区内の地形別による草地利用回数について調査した。また1960年から1963年までに茶臼山放牧場において,放牧育成した496頭の乳用育成牛にみられた放牧牛の一般習性について調査した結果は次のとおりである。(1)放牧牛の動線から牛の移動についてみると,その移動には一定のきまった方向はなく,牧区内のすべての所を2回以上通っている。しかも放牧牛はおおむね各季節とも午後に飲水のため谷間におりているのが観察された。また牛は各牧区ともほぼ同じ場所で就寝するようである。(2)草地の使用回数は,牧区の使用日数が多くなるにつれて増加する傾向がみられ,その要因に草生が関係していることが考えられた。(3)放牧牛の一般習性として,月齢別に編成した放牧牛群は,放牧日数の経過とともに自治統率的集団を構成することが観察された。その他,牛の脱柵の原因に,悪癖,災害の発生,飲水,草生状況,牧柵の破損,他からの影響などが見うけられたが,いずれの場合でも脱柵牛に強い帰群性があること,採食および横臥休息中の群は移動し難く,その反対に佇立休息中のものは捕獲ならびに移動し易いこと,群をなした牛は,群からはなれた牛が群をさがすときや,水のほしい時をのぞき,あまりなかないなどが観察された。
著者
大野 脇弥 田中 明
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.138-143, 1966-03-30
被引用文献数
3

放牧牛群の行動の季節型の有無をしらべるため,地形ならびに気象条件と行動の関係を調査した結果は次の通りであった。1)牛群の行動時間は日照時間と関連して,春,夏,秋の順に短かくなり,春と秋との間には2時間の差があった。2)季節ごとの行動形についてみると,春は移行形,夏は休息形,秋には採食形が多く出現する傾向がみられた。3)地形と行動との関係をみると,採食形は牧区全域にわたってみうけられたが,朝,夕の気温の低い時期は斜面で,日中暖い時は高台や谷間で多く行なわれる傾向があった。また休息は三つの季節を通じ,昼間は風とおしのよい高台で,夜間は風当りの少ない斜面でみられた。従って春夏季は高台で,秋季は平地および斜面で行動するのが多くみうけられた。4)気象と行動との関係のうち,晴天日と雨天日の行動について調査した結果,採食時間は,雨天日が少なく,休息時間はその逆であった。しかも雨天日においては佇立休息が晴天日の2倍以上もあり,横臥休息は逆に短かかった。5)行動形については,晴天日においては採食,移行,休息の行動形が交互にみられたが,雨天日には降雨以後,採食形が少なく移行形が多くなった。また雨天日は,牛の就寝時間がおくれ,降雨のため風下へ牛群が移動した。