- 著者
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大野 脇弥
田中 明
- 出版者
- 日本草地学会
- 雑誌
- 日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.3, pp.138-143, 1966-03-30
- 被引用文献数
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3
放牧牛群の行動の季節型の有無をしらべるため,地形ならびに気象条件と行動の関係を調査した結果は次の通りであった。1)牛群の行動時間は日照時間と関連して,春,夏,秋の順に短かくなり,春と秋との間には2時間の差があった。2)季節ごとの行動形についてみると,春は移行形,夏は休息形,秋には採食形が多く出現する傾向がみられた。3)地形と行動との関係をみると,採食形は牧区全域にわたってみうけられたが,朝,夕の気温の低い時期は斜面で,日中暖い時は高台や谷間で多く行なわれる傾向があった。また休息は三つの季節を通じ,昼間は風とおしのよい高台で,夜間は風当りの少ない斜面でみられた。従って春夏季は高台で,秋季は平地および斜面で行動するのが多くみうけられた。4)気象と行動との関係のうち,晴天日と雨天日の行動について調査した結果,採食時間は,雨天日が少なく,休息時間はその逆であった。しかも雨天日においては佇立休息が晴天日の2倍以上もあり,横臥休息は逆に短かかった。5)行動形については,晴天日においては採食,移行,休息の行動形が交互にみられたが,雨天日には降雨以後,採食形が少なく移行形が多くなった。また雨天日は,牛の就寝時間がおくれ,降雨のため風下へ牛群が移動した。