著者
大須賀 敦俊 縣 直道 窪田 貴文 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.3, pp.1-7, 2017-05-09

仮想化を用いたクラウド環境では,ひとつの仮想マシン (VM) でひとつのアプリケーションを動作させる形態が一般的になっている.この特徴を活用し,クラウド環境に特化した OS の設計 ・ 開発が行われている.これらのクラウド特化型 OS は,ハイパーバイザと重複した機能をゲスト OS から取り除いた,軽量かつ省メモリな実装となっている.これらの OS は新規の設計となっているため,1) 既存 OS と同等の機能を利用できるとは限らないという機能性,および 2) 既存 OS とは別個に保守が必要になるという保守性の面において不十分である.本論文では,既存の OS に対する改変を最小限に留めつつ,クラウド特化型 OS と同等の性能を実現する方法として,既存アプリケーションを既存のカーネル内で実行できるようにするフレームワークを提案する.この方法では,プロセスによるオーバーヘッドを削減することで,クラウド特化型 OS に近い軽量化を行うことができる.同時に,1) 実装において既存 OS の機能をそのまま利用できること,2) 既存 OS コミュニティによりコア機能が保守されることを期待できる.Linux を対象にフレームワークの実現を行った.本フレームワークの有用性を示すため,LevelDB というキーバリューストアをカーネル内で実行したところ,プロセスとして実行した場合と比較して,スループットが最大 1.46 倍となった.
著者
縣 直道 大須賀 敦俊 窪田 貴文 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.9, pp.1-6, 2017-07-19

仮想化を利用したクラウド環境では,ひとつの仮想マシン上でひとつのアプリケーションのみを動作させる構成が一般的になっている.このようなクラウド環境の構成に特化した OS が提案 ・ 開発されている.これらの OS では,アプリケーション間の保護をハイパーバイザに任せることで機能を削減し,軽量化 ・ 省メモリ化を実現している.さらに,ベアメタルハイパーバイザ上で動作させることで,OS をアプリケーションに特化させることも可能である.一方で,プロセスの機能を提供しないため,マルチプロセスで動作するアプリケーションに対応することができない.また,ホスト OS の機能を利用することでマルチプロセスに対応した仮想化環境特化 OS の場合,ホスト OS が提供していない機能を実装することができない.本論文では,単一アドレス空間内で複数のプロセスを擬似的に実行させる手法を提案する.これによって,ホスト OS の存在を前提にせずマルチプロセスに対応することができ,既存のクラウド環境特化 OS と同様の軽量化を可能にする.