著者
上野 幸三 太刀川 哲平
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.554-558, 1962
被引用文献数
1

亜硝酸ナトリウムによりスルファニルアミドを1~6<I>N</I>塩酸酸性溶液中において7組合わせの双金属電極,白金-アンチモン,白金-ニッケル,白金-タングステン,白金-パラジウム,白金-タンタル,白金-モリブデン,白金-銀を用いて電位差滴定を行ない,おのおのの組合わせの滴定曲線および終点における電位変化を求め,さらに,塩酸の濃度のそれらにおよぼす影響につき比較検討した.白金-タングステンおよび白金-パラジウムの組合わせはピーク形滴定曲線を示し,終点において電位は急激に降下した.ほかの5組合わせはS字形を示し,終点において電位は上昇した.1<I>N</I>塩酸酸性溶液中においては終点の急激な電位変化は求められず,塩酸濃度が高くなるにつれて終点における電位変化の大きさ(Δ<I>E</I>/ΔV)は大きくなった.7組合わせを用いて,6<I>N</I>塩酸酸性溶液中において40~170mg/55m<I>l</I>のスルファニルアミドを定量することができる.<BR>白金-タングステンおよび白金-パラジウムの組合わせはピーク形の滴定曲線を示し,終点において急激に電位降下し,一方,ほかの5組合わせはほぼS字形の曲線を示し,終点において急激に電位上昇した.また,7組合わせのうち,白金-モリブデンが終点における電位変化の大きさは小さく,ほかの組合わせはほぼ同じ大きさであった.1<I>N</I>塩酸酸性溶液の場合は明確な終点が求められず,また,塩酸濃度の増加にともない終点における電位変化の大きさは大きくなった.したがって,その濃度は6<I>N</I>がよい.7組合わせを用いた電位差滴定法によりスルファニルアミド40~170mg/55m<I>l</I>を直接定量することができる.さらに,ほかの芳香族第一級アミンたとえばアニワン,<I>p</I>-ニトロアニリン,<I>α</I>-ナフチルアミンなども本法により定量可能と考えられる.