著者
太田 均
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.25, pp.168-155, 2020-02

室生山寺の創建及びそれに至る「前身寺院」の事情を明らかにして、その宗教環境につき考察した。室生山寺は山部親王の病気平癒を祈る「延寿法」(宝亀九年)成就後の創建で、前身寺院は宝亀元年から同五年の間に成立したと推定した。前身寺院創建に関与した賢璟は、後に平安京を地相しており、寺地の選定にあたり優れた地相能力を発揮し、地相に臨んでは『高僧伝』『続高僧伝』などに記される、中国における山に対する信仰を念頭に、特に龍穴神を護法神と位置づけることを重視したと見られる。以上の考察に際し、初期室生寺(室生山寺とその前身寺院)成立に関し必須の史料である『宀一山年分度者奏状』と、それに関する従来の解釈を踏まえた。