著者
太田 奈奈美 児玉谷 仁 山崎 重雄 藤永 薫 小松 優 齊藤 惠逸
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.539-544, 2009-06-05

トリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(III)錯体の化学発光反応を利用したリン酸イオンの高感度測定法を開発した.酸性条件下,リン酸イオンとモリブデン酸イオンが反応して生じるモリブドリン酸イオンをトリ-<i>n</i>-プロピルアンモニウムイオンによりイオン対を形成させることで有機溶媒中に抽出した.この対イオンとして抽出されたトリ-<i>n</i>-プロピルアンモニウムイオンをトリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(III)錯体の化学発光反応を用いて検出することで,間接的にリン酸イオンの検出を行った.抽出と検出のための最適条件を検討し,検量線を作成したところ,0.01~10 μMまで良好な直線性(<i>r</i>=0.9998)が得られた.検出限界(<i>S</i>/<i>N</i>=3)は7.3 nM(0.22 ngP/mL),再現性は2.0%(1 μM,<i>n</i>=6)であった.環境水中のリン酸イオンの測定に応用した結果,既存のモリブデン青法と本法の検出値は両者で近い値が得られ,またモリブデン青法では感度不足で測定不可能な試料においてもリン酸イオンの測定が可能であった.