著者
太田 征孝 福代 新治 白築 理恵 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.578-581, 2017

<p>75 歳,女性。2013 年に右踵部に易出血性の紅色腫瘤が出現した。2014 年に近医で腫瘤を切除され,悪性黒色腫の診断で当院を受診した。原発巣の拡大切除および骨盤内・鼠径リンパ節郭清,DAVFeron(ダカルバジン+ニムスチン+ビンクリスチン+インターフェロン <i>β)</i>投与を受けた。2015 年に皮膚・肝・肺・骨盤内・骨に腫瘤形成がみられ,悪性黒色腫の転移と診断されてニボルマブ点滴投与を開始された。 腫瘍縮小効果に乏しく,ベムラフェニブ内服に変更された。ベムラフェニブ投与開始後,皮膚・肺・肝・骨盤内転移は速やかに縮小傾向となったが,骨転移は縮小傾向に乏しかった。投与開始 3 カ月の時点で食欲低下やふらつき,失見当識が出現した。頭部 CT,MRI 画像では異常所見は認めなかった。投与開始 4 カ月で意識障害が出現し,造影 MRI および髄液細胞診を行ったところ,癌性髄膜炎および脳転移の所見がみられ,入院後 2 週間で永眠した。ベムラフェニブ投与により転移巣の縮小効果が得られたが,髄液移行性が低いことから中枢神経系転移には効果がみられなかった。また,本症例はメラニン含有量の少ない悪性黒色腫であり,単純 MRI 画像では描出されず,造影 MRI の撮影が必要であった。</p>