著者
太田 英順
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.39, no.218, pp.355-372, 1989

豊羽銀鉛亜鉛鉱床には錫・銅と共にインジウムが存在する.ビスマス,タングステン,アンチモン,砒素,コパルトも微量ながら広範囲に分布する.インジウム鉱物としては閃亜鉛鉱とインジウム銅鉱の中間組成を有する亜鉛インジウム鉱物,AgInS<SUB> 2</SUB>の組成を有する銀インジウム鉱物,インジウム銅鉱,櫻井鉱が産するが,ケステライト,黄錫鉱,閃亜鉛鉱,異方性を有する黄銅鉱もかなりの量のインジウムを含む,これらのうち経済的に最も重要なのは亜鉛インジウム鉱物と含インジウム閃亜鉛鉱で,次いでケステライト,黄錫鉱,含インジウム黄銅鉱である.含インジウム閃亜鉛鉱は亜鉛インジウム鉱物と閃亜鉛鉱の固溶体であることが判明した.また,インジウム銅鉱と亜鉛インジウム鉱物,ケステライトと亜鉛インジウム鉱物それぞれの間にも広い固溶体の存在が認められた.これらの固溶体は2(Zn, Fe)とCuIn,(Zn, Fe)InとCuSnの置換によるものである.黄銅鉱と黄錫鉱間の固溶体では(Fe<SUP> +2</SUP>, Zn)Snと2Fe<SUP> +3</SUP>,黄錫鉱またはケステライトとインジウム銅鉱間では(Fe<SUP> +2</SUP>, Zn)Snと2Inの置換がそれぞれ主なものである.上記の鉱物の産状は,今まで見積られていた豊羽鉱床の最高生成温度(300℃)よりも50から100℃高い温度でこれらの鉱物が晶出したことを裏付ける.