著者
奥 聡
出版者
北海道教育大学旭川校
巻号頁・発行日
2008

アイヌ語学と現代の言語理論, 井筒勝信編, pp.161-200
著者
奥 聡
出版者
日本英文学会北海道支部
雑誌
北海道英語英文学 (ISSN:02870282)
巻号頁・発行日
no.53, pp.41-77, 2008

本稿は日本英文学会北海道支部第52回大会(2007年10月7日札幌大学)において行われた語学部門シンポジアム「言語能力と一般認知能力との相互関係:生成文法の試み」の内容を中心にまとめたものである.初めに序論として,第1節で生成文法研究の概歴を本稿との関係の深い部分を中心に述べる.第2節では数量詞繰上げ(quantifier raising: QR)を,第3節では強勢と焦点の問題を,それぞれ具体例として論じ,Reinhart (2006)のreference set computation の考え方を紹介する.第4節では,日本語の語順と削除現象に対して提案されている情報構造に基づく機能論的原理による説明を概観し,reference set computation に基づくより深いレベルでの説明の提案を試みる.これによって,一般に文脈的意味情報に依存すると考えられる機能論的原則と経済性の原理に従うとされる(狭い意味での)統語論の原理とが有機的に結びつく可能性があることを論じるのが本稿の目的である.