著者
堀江 幸治 奥本 侑香
出版者
九州女子大学・九州女子短期大学
雑誌
九州女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09162151)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.83-97, 2008

本研究では、筆者(奥本)が中学校の養護実習で出会った、保健室に頻繁に来室するが、室内で何も話さずにいた女子中学1年生(A子)への援助過程を、コミュニケーションの成立という視点から振り返り、検討した。関わりの初期では、A子が話してくれないことに筆者が戸惑ってしまった。そのことがA子にも伝わり、余計に話せなくなってしまったように思う。中期から後期にかけては、筆者はA子に何とか話してもらおうという気持ちよりも、A子を受けとめたい気持ちが勝った。A子もまた、必死に何かを伝えたい様子であった。そのときの『どうしたら伝わるんだろう?』という不安の裏に隠れていた『伝わりたい』という双方の思いが、はじめて筆者とA子を結びつけ、徐々にA子が筆者に話せる関係を作る要因になったように思う。