著者
濱田 忠平 宮原 利浩 川崎 秀一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.1042-1050, 1996-07-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
6

プリント配線板に用いられている紙フェノール積層板のフェノール樹脂の分布状態の分析法について検討を行った。紙フェノール積層板中のフェノール樹脂の分布は, 標識となる元素が含まれていないため分析が困難であった。今回は, 前報で報告した, 木材及びパルプ中のりグニンにオスミウムを付加して, その分布状態をEPMA で観察する方法を応用して, フェノール樹脂の分布状態を観察する方法について検討した。オスミウム酸は, フェノール樹脂に付加する処理時間は, プリプレグ (フェノール樹脂を紙に含浸して一次硬化させたもの) では48時間以上, 紙フェノール積層板では72時間以上を要した。この処理によって, オスミウムはプリプレグ及び紙フェノール積層板中のフェノール樹脂に選択的に付加することが示された。この方法により紙フェノール積層板断面のWDSカラーマップを低倍率で観察すると, 各層間でのフェノール樹脂の分布が明らかになった。更に, これを高倍率で観察すると, フェノール樹脂がパルプ繊維の周囲及びルーメン内で高く分布していることが明らかになった。また, 積層板製造時にフェノール樹脂と同時に含浸される難燃剤中の臭素原子を同時に検出することにより, それぞれの浸透挙動が異なっていることが明らかになった。今後は, プリプレグ及び紙フェノール積層板中のフェノール樹脂の分布状態が紙フェノール積層板の各種特性にどの様な影響を及ぼすかについて検討を行う予定である。