著者
宮沢 福寿
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 日本蚕糸学会第73回学術講演会
巻号頁・発行日
pp.44, 2003 (Released:2004-05-27)

蚕にセラミックスを食べさせる方法による、セラミックス入りの繭糸の開発を行った。 まず、実用化している人工飼料にセラミックスを添加して、セラミックス入り飼料を作った。 これを蚕に給餌して、飼育に適した添加濃度と、効率的な給餌時期を検討した。さらに、給餌したこれらのセラミックスが、繭糸をはじめ、蚕体のどの組織に移行しているか定量分析をして調べた。 飼育結果は、蚕の生育に害の無い飼料への添加濃度は、乾物あたり25%程度までであることが分かった。 セラミックス移行確認の定量分析結果は、繭糸へは飼料への添加濃度に比例して25%まで増加した。また、給餌時期では5齢の後半が特に有効であった。 また,組織への移行では血液、絹糸腺、蛹、脱皮殻、繭糸を定量分析して調べたが、いずれの組織にも移行していることが分かった。 今までセラミックスのような不活性の固体粒子が、蚕の消化管を通過して絹糸へ移行することは不可能という考えが常識とされてきた。 しかし今回の検討で、これを覆す結果が確認されたので報告する。 この結果は、蚕に各種機能性を持つ固体粒子を給餌する方法での、機能性絹を開発する基礎となると思われる。