著者
武田 典子 楠田 聡 寺西 哲夫
出版者
北海道立水産孵化場
巻号頁・発行日
no.56, pp.107-113, 2002 (Released:2011-12-19)

1.鵡川漁協シシャモ孵化場に収容した粘着性除去処理シシャモ受精卵に付着した褐色物質の特定、付着の原因および艀化への影響について調査した。 2.試験卵は、鵡川および釧路川で捕獲されたシシャモから得た受精卵を0.15%タンニン酸溶液で粘着性除去処理後、ビン式孵化器に収容した。あわせて自然産卵方式による受精卵も孵化まで鵡川漁協シシャモ孵化場に収容した。 3. 孵化用水中の総鉄と第一鉄濃度を測定するとともに、生卵20粒に付着している総鉄濃度を測定した。合わせて卵の生卵率(%)と孵化率(%)の計数は毎月1~2回行なった。 4. 孵化用水の総鉄濃度はlmgL-1以上あり、第一鉄濃度も高い値を示す時期があった。粘性除去卵に付着した総鉄濃度は時間の経過とともに増加し、孵化直前には生卵20粒あたり250~300μgに達したが、自然産卵群では総鉄濃度は50μg以下の低い値で経過した。生卵に付着した総鉄濃度が高いと孵化率は低い傾向がみられた。 5.総鉄や第一鉄濃度の高い孵化用水を使用して大量孵化方式を採用する場合、卵に鉄が付着しにくい粘着性除去方法を開発する必要がある。