著者
Burrows James 加茂 翔伍 小出 和則
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

[背景] Birch 還元は1944年にA. J. Birchによって報告された反応で、安定なベンゼン環を1,4-シクロヘキサジエンへと選択的に還元する特殊な反応である (図A)1)。他に代え難い反応である一方、毒性が高く取り扱いが難しい液体アンモニアや高反応性のアルカリ金属を必要とする等の問題点から、極力使用を避けられてきた反応である。また1955年にR. A. Benkeserらが報告した手法は、安価な低級アミンを溶媒に用いて、液体アンモニアを必要とせずに脱芳香族化を行えるが、過剰還元が進行する(図B)2)。その後、アンモニアを用いない還元法がいくつか報告されてきたが、高価な試薬や特殊な装置を要する等の問題から、より安全かつ簡便で安価な手法が求められていた。本研究では、THF中、リチウムとエチレンジアミンを用いたBirch還元法を見出したので、その詳細を報告する。[方法・結果] まず安息香酸 1 を用いて反応条件の検討を行った結果、THF中でリチウム3当量とエチレンジアミン 6当量を用いた際に所望の反応が進行し、還元体2が収率95%で得られた(図C)。またn-ブチルフェニルエーテル3に対しても、同様の条件に2.5当量のt-BuOHを添加することで、収率85%で還元体4が得られた。基質検討においては、N-ヘテロ環化合物の還元を含め、種々の芳香族化合物を良好な収率で還元することができた。本講演では、反応条件の最適化や基質適応範囲、アミンリガンドの構造-反応性相関など、反応の詳細について発表する。ref: 1) Birch, A. J. J. Chem. Soc. 1944, 430. 2) Benkeser, R. A. et al. J. Am. Chem. Soc. 1955, 77, 3230.3) Burrows, J.; Kamo, S.; Koide, K. Science 2021, 374, 741.