著者
小口 あや
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.171-184, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
12

本研究は,作品鑑賞時,中学生がどのように作品と向かい合う傾向にあるのかを明らかにするために行った。これまでの研究で,小学3年生から6年生は,作品世界に埋没する観念的自己と現実世界で客観的に作品を見る現実的自己の両方で作品と向き合っていること,鑑賞時はどちらかというと観念的自己が強く出ていることが分かっていた。今回の調査と鑑賞実践で,中学2年生から観念的自己が弱くなり代わりに現実的自己が強くなることがわかった。中学2年生からの変容は,他の研究分野での発達段階とも重なる。小学生に続いて中学1年生までは,作品世界に入り込んで作品を感受する観念的自己が強い。中学2年生からは作品をあくまでも現実世界に存在する物として感受する現実的自己が強くなる。それぞれの学年に合わせた指導をすることが教育方法論としては重要である。