著者
上田 弘則 小山 信明
出版者
日本草地学会
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.255-260, 2007 (Released:2011-03-05)

放牧地のワラビ防除のためにアシュラム剤を散布すると、イノシシに掘り起こされることがある。このような掘り起こしは家畜の餌量を減少させ、雑草の侵入や定着を助長してしまうという問題がある。そこで、アシュラム剤散布と掘り起こしの因果関係を明らかにすると同時に、掘り起こしがワラビの根茎を目的としているのか、また根茎の貯蔵炭水化物含有量と関係があるのかについて野外試験を行った。2003年7月に野草地内のワラビが優占している場所にアシュラム剤散布区と無散布区を設定した。ワラビの地上部が枯死した9月にイノシシの掘り起こしが確認され、散布区で対照区よりも掘り起こし割合が高かった。また、イノシシはワラビの根茎を選択的に掘り起こしていたが、ワラビの根茎の貯蔵炭水化物含量率は散布区と対照区で差はみとめられなかった。
著者
小山 信明 小川 恭男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.264-270, 1994-10-31
被引用文献数
3

ネザサの全面開花が生育に及ぼす影響を,阿蘇北外輪山域のネザサ型放牧草地(標高920m)を対象に,1991-1992年にかけて調査した。(1)1991年の出穂稈数は0本/m^2であったが,1992年の出穂稈数は1420-2204本/m^2で全面開花した。(2)最大地上部重は,1991年には274.4-297.5gDM/m^2であったが,1992年は64.5-69.8gDM/m^2で前年の約23%にすぎなかった。(3)地下部重は,1991年の4月には1823-1909gDM/m^2であったが,8月には1776-1897gDM/m^2と少なく,11月には2173-2536gDM/m^2と再び増加した。一万1992年では4-11月にかけて減少し,特に8-11月にかけて多量の枯死がみられた。このため1992年4月21日には地下部生存部分重は1609-2093gDM/m^2あったが,11月13日には24-60gDM/m^2と約2%に減少した。(4)窒素年間吸収量は,1991年では4.40-5.15gN/m^2であった。しかし,1992年は-8.30--10.67gN/m^2で,多量の窒素がネザサから失われた。以上の結果から,全面開花するとネザサの生育は地上部・地下部ともに低下し,更に夏-秋にかけて地下部が多量に枯死し,それに伴ってネザサから多量の貯蔵窒素が失われた。