著者
尾板弘崇 山田浩史 谷本輝夫 小野貴継 佐々木広
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-130, no.21, pp.1-7, 2014-07-21

近年,クラウドサービスは,課金額に応じて必要な計算リソースを利用することができるため,設備投資をせずに大規模なデータ処理が可能となる.クラウドサービスを提供する企業 (クラウドサービスプロパイダ) はサーバに仮想マシン (VM) を使用していることが多い.一方,マルチコアプロセッサが広く普及してきており,ひとつのチップ上に搭載されるコア数は現在も増え続けている.マルチコアプロセッサを搭載したマシン上で VM を立ち上げる場合,VM に割り当てる仮想 CPU(vCPU) 数は適切に分配する必要がある.vCPU を多く与えてもアプリケーションの中には並列性が頭打ちになるものがあり,性能が上がるとは限らず,少なすぎてもアプリケーションの並列性を生かせず,性能が出ない.そのため,適切に分配しない場合,無駄な課金やマルチコアプロセッサの非効率な利用につながってしまう.本研究では,クラウド環境においてマルチコア CPU 上で動作する VM の挙動を解析し,マルチコア CPU を効率よく動作させるための VM の集約方法や仮想マシンモニタ (VMM) が提供すべき資源管理手法確率のための足がかりとする.解析は,VM に割り当てるコア数を変化させながら,クラウド環境で動作するワークロードを模したベンチマーク [1] を動作させ,ワークロードのリソース使用率を観察する.具体的には,機械学習 (Data Analytics),キーバリュー型ストレージ (Data Serving),グラフマイニング (Graph Analytics),Web 検索 (Web Search) のワークロードを動作させる.実験の結果,クラウドサービスで実行されるワークロードには,vCPU 数を増やすともにスケールするもの,ある vCPU 数まではスケールするが,それ以降は変わらない,あるいは,逆に性能が下がってしまうもの,vCPU 数にかかわらずスケールしないものがあるということが明らかになった.