- 著者
-
小飯塚 徹
- 出版者
- Hokkaido University
- 巻号頁・発行日
- 2018-09-25
人類の生活向上に貢献した光は多々あるが、その中の 1 つに照明がある。照明の進化は、発光材料に求められる性能を知るうえで重要な手がかりとなる。近代照明の歴史の始まりは、ガス灯からと考えられる。ガス灯は 1797 年イギリスのマンチェスターに初めて設置された。このガス灯によって工場での夜間作業も可能となり、照明は産業革命に大きく貢献した。日本では文明開化の流れを受けて、1872 年(明治 5 年)に横浜馬車道通りに初めて街灯としてガス灯が用いられている。1879 年の Edison による炭素フィラメントを使用した白熱電球の商業化により光がさらに身近なものになった。B1 白熱電球はさらに、CoolidgeとLangmuirによるタングステンフィラメントと不活性アルゴンガスを使用する改良を施したことで現在の白熱電球が完成し、その地位を確固たるものにした。その後、高効率な白色光源としてハロリン酸カルシウム蛍光体を利用した白色蛍光灯、希土類を利用した三波長蛍光灯が普及していった。さらに現代においては LED (Light Emitting Diode)を利用した照明が普及しつつある。白色 LED は蛍光体を利用したものが多いく普及しており、同様に蛍光体を利用している白熱電球や蛍光灯と比較しその省電力と長寿命な光源として注目されている。地球温暖化対策 CO2 削減の手段として、白熱電球から LED 等の高効率照明への切り替えを推奨している。日本政府は「新成長戦略」および「エネルギー基本計画」において、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略の柱の1つとして、高効率次世代照明である LED 照明、有機 EL 照明を 2020 年までにフローで 100%、2030 年までにストックで 100%普及させる目標を掲げている。白色 LED は最も地球にやさしい光源の1つとして注目を集めている。